横の繋がり(2)
先日、新規の染色ご依頼にお客様の会社(Aさま)へ伺いました。
Aさまは、シルク以外にも様々な素材を扱われており、Aさまにとってのお客さまのご希望に叶えられるようにと常に新しい素材開発を積極的に行っておられました。
弊社はシルクの精練染色業ですので、目の前にある糸を最大限活かすこと、また、目的の色にどれだけ近づけるかに全精力を注ぎます。
全精力を注ぐがゆえにシルクを中心に考えすぎてしまい、シルクの都合を前面に押し出してしまいます。
今までの弊社とお客様との接点とすればここまでで良かったのかもしれません。
しかし、一歩社外に出れば様々な素材の中の一つに過ぎないシルク。
シルクの都合ばかりを前面に押し出すと『シルクは扱いにくい』というマイナスイメージまで必要以上に与えてしまう事にもなりかねません。
社内で仕事をしている時には直ぐに忘れてしまう重大な落とし穴です。
社内で染色依頼が来た糸を染めているだけではなく、外に出てシルクの魅力を知ってもらう努力、当然デメリットについても事前にお伝えする事が大切だと痛切に感じました。
素材の特徴や染色技術、堅牢度など染屋としての経験している様々な情報を提供することでも、お役に立てる事はたくさんあります。
以前、『西陣には絹糸、撚糸、和装の織物、洋装織物、ニット、染色など各分野に詳しい方や職人さんたちが集まっている。
成功体験に捕らわれることなく今こそ横の繋がりを再確認し、今まで途絶えず受け継がれた技術や経験値を見直す事で斬新なアイデアが必ず生まれると思う。』と書きました。
しかし、これはあくまでも生産者サイドの連携です。
販売者・技術開発者並びに生産者の連携でそれぞれの特化した技術を活かし、より完成度の高い商品創りの達成に貢献できるような会社になりたい。
という大きなヴィジョンを抱きつつ、日々黙々と糸と向きあうことが大切だと教わりました。