糸を染めることから生まれた漢字
「素」 「玄」
「素」という字は糸を染めている様子を描いた象形文字です。
「土」という字に横線を一本加えた上の部分は、束ねた糸の先が垂さっがている状態を表し
下の「糸」という字は糸を束ねた形を表しています。
また「玄」という字は黒い糸を束ねた状態の絵から生まれた古代文字です。
「幺(いとがらし)」の部分はねじった糸束を表し、その上に横棒を渡してつるしているようなイメージで
こちらも染色をしている様子を表しています。
古来、糸を染めるときは白色の糸を束状に結びねじって、染汁の入った鍋に浸けて黒く染めました。
染まった糸束の結んだ箇所は「もと」の白いままで残ります。その白く残った部分を
「素(す)」といい「しろ、もと」という意味を表す漢字になりました。
素のまま、白いままという意味があることから「素人」の由来といわれています。
また染まり切った糸束を「玄」といい、古来、黒い染料で染めるのが一般的だったので
そこから「黒色」の意味を表す漢字になりました。
「玄人」と使われるのは、色の染まっていない部分を「白色」で素のままと考え
「白」と「黒」の対比で「素人」に対して「玄人」という言葉ができたとされています。
漢字の成り立ちと共に、受け継がれてきた染色という伝統工芸の素晴らしさ。
時代ごとの美意識を反映し、発展を遂げてきたものづくりの確かな技術は
さらに未来へ語り継がれていきます。